〜〜〜♪ 〜〜♪  〜〜〜〜♪ 〜♪    〜〜〜♪

 

 

 

外から聞こえてくる 心地の良い音色午後2時の鐘の音。 眠りを誘う 子守唄。

 

「……」

 

頭が少し ボーっとする。 意識も 曖昧になってくる。

 

「……―――」

 

でも 終わらせなきゃいけない。 重くなる瞼の合間から見えている、書類の―――。

 

 

 

「バーストはん!!!」

 

 

 

「―――っ!?」

 

俺を呼ぶ声で、一気に 現実の世界に引き戻される。 顔を上げれば、アニマが心配そうに 俺の顔を覗き込んでいた。

 

「ほんまに大丈夫かいな? 朝から ずーっと眠そうにしてるで」
「…あぁ、大丈夫だ。 大丈夫…大丈夫だから」

 

1ヶ月前 フレイシムの氷山地帯で起こった大きな雪崩で、メリックスの一部の村と フレイシムの国境付近の村に被害が出た。 向こう側の人手が足りず、俺のところも急きょ 救助隊を結成して派遣。 それによる仕事のしわ寄せが増え、部下達の仕事の分を 俺も積極的にやるように。 そのせいで、あまり眠れない日々が続いていた。
アニマや 他の部下達には、あまり負担はかけさせたくない。 俺が しっかりしなきゃ。 そう、俺が……。

 

「いーやっ! 全然 大丈夫なわけない! ちゃんと休めてないんやろ!?」
「……」
「みんな心配してるねんで。 うち等に気ぃ使ってくれるのは分かるけど、もうちょっと 自分の事にも気ぃ使いや。 今 魔王であるあんたがぶっ倒れたら、大変なんやから」
「…ごめん…」
「謝る必要はないんや。 …ほなっ、これはうちが持っていくから バーストはんは少し休み」

 

何とか書き終えた書類の束を、アニマが手早くまとめて 持っていった。 やっと一息つけると 大きなため息を吐いて、視線を下ろして 気がついた。 書類の紙が1枚 俺の顔を覗き込んでいた。

 

「あっ…」

 

確かこの書類も、渡さないといけないやつだったはず。 アニマはこの書類に気づかず、行ってしまったようだ。 …いや、アニマが書類を束ねる時に渡さなかった 俺が悪いか。 どっちにしろ、まだ 休めそうにはない。

 

「仕方ない。 届けるか…」

 

こういう時に すぐに連絡を取れる手段があればと、痛感する。 重い体を立たせ、書類を片手に 扉の方に向かう。 そうして 扉を開けたその先に、見慣れた人物が立っていた。

 

「…フォルテ?」
「……」
「何でお前がいるんだ? 仕事は―――」

 

いつもと違って、真面目な顔をして 俺を見つめてくる。 視線が下げた フォルテの右手の中に、指揮棒フォルティックタクトが。

 

 

 

〜♪ 〜〜〜♪ 〜♪   〜〜〜〜〜♪

 

 

 

(あっ―――)

 

聞こえてきた 心地の良い音色フォルテの音。 眠りにいざなう 子守唄。
それに気づいた時には、俺はすでに 深い眠りの闇に落ちていた―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜〜♪ 〜♪  〜♪ 〜〜〜♪

 

 

 

聞こえてきた 心地の良い音色優しい声

 

 

 

〜〜〜♪  〜〜♪ 〜♪   〜〜♪

 

 

 

頭を優しく 撫でられる。

 

 

 

〜〜〜♪  〜♪  〜〜♪ 〜♪

 

 

 

この音色の主を 俺は知っている。

 

 

 

「……んっ…」

 

ゆっくりと目を開ければ、俺を覗き込んでいる フォルテの姿が見えた。 フォルテの左手が、俺の右頬を撫でているのが分かる。
俺が目を覚ましたのが分かったのか、フォルテは優しい笑みを見せた。

 

「起きたか、バースト」
「……フォル テ…? 何で俺…ベットに…?」

 

記憶の最期を辿る。 確か アニマに書類を渡して、でも 1枚だけ忘れていたから届けようとして、フォルテと会って……。

 

「…そうだ、書類…」

 

やろうとしていた事を思い出して、重い体を起き上がらせようとして フォルテに止められた。 「寝とけ」と言われ、再び横にさせられる。

 

「あの書類は ちゃーんとお前の部下に渡しておいたから。 だから 心配するな」
「…今 何時だ?」
「10時だ」

 

最期に鐘の音を聞いたのは 午後2時。 つまり、8時間も眠っていた事になる。 その間にあったやるべき事を やってないわけで…。

 

「…仕事―――」
「俺の部下達と一緒に 全部終わらせといた」
「…みんなは―――」
「お前の部下達は、みんなちゃんと休んでるから 安心しろ。 今は 何も考え―――」
「…派遣したあいつ等は―――」
「バースト」

 

口を軽く 塞がれしまった。 フォルテが、眉をひそめて 心配そうな顔をする。

 

「オマエはちーっと、周りの奴等に気を使い過ぎだ。 アニマがそれで ボヤいてたぞ」
「……」
「もうちょっと、自分の体の事を考えろ。 他の奴等の心配する気持ちは分かるが、自分の心配もしろよな」
「…そうだよな。 体調管理も、仕事の内だもんな…」
「違う、そうじゃない」

 

少しだけ、フォルテが俺に近づいてきた。 左手で頭を 軽く叩かれる。

 

「この国は オマエ1人で支えているわけじゃないんだぞ? アニマや他の部下達が 協力してやってんだ。 「国を良くしていきたい」っていう気持ちは、みんな同じだ」
「……」
「それとも、そんなにアニマ達の事が信用できないのか?」
「違う。 そうじゃない…」
「じゃぁ、もっと頼れよ。 お前はこんなにもな 頼れる奴等がいるんだから」

 

…あぁ、そうだった。 俺はこれで、あっち・・・で何回も 迷惑をかけたんだっけ…。
フォルテがまた優しく 俺の頭を撫でる。 フォルテの暖かい体温が 伝わってくる。

 

「後な、オレな ちーっとだけ傷付いてんだぞ」
「?」
「お前はな、1番身近で 1番頼れるオレを頼ってくれなかったんだ。 夫婦はお互い 支え合って当然だろ?」
「あぁ…ごめん…」
「だから もぉーっと頼ってくれよ。 部下達もいるけど、オマエにはオレが 付いているんだからな」
「うん…」

 

 

 

〜♪ 〜〜〜♪ 〜♪   〜〜〜〜〜♪

 

 

 

聞こえてきた 心地の良い音色。 眠りに誘う 優しい優しい子守唄。

 

「フォルテ…ありがと……」
「ヘヘッ」

 

フォルテの優しい笑みを見て、それで 安心して。 暖かいベットと優しい音色に包まれて、再び 深い眠りの闇に落ちていった―――。

 

 


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